20周年を迎えたジャパンカップはふるい落としの末の小集団スプリントにもちこまれ、ネイサン・ハース(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)が西谷泰治と佐野淳哉を下し優勝を挙げた。

スタートに並ぶイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)やダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)スタートに並ぶイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)やダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) photo:Kei Tsuji前日のオープンレースやクリテリウムは雨に祟られたが、ジャパンカップ本戦のこの日は曇り空。路面こそ濡れているものの、雨に濡れる心配がなく早朝から訪れた多くの観客は安堵の表情を見せていた。

10時のスタートに先立って、このレースを最後に現役を引退する柿沼章(宇都宮ブリッツェン)の引退セレモニーが行われた。20年を数える現役生活の最後に、所属チーム最大の目標であるジャパンカップを選んだ柿沼はこの後、気迫の走りを見せることになる。

スタート直後は穏やかな立ち上がり。1周目の古賀志林道の登りでは決定的な動きは生まれないが、下りで逃げスループが形成された。リクイガス・キャノンデールが集団のペースを意図的に抑えたため、1分40秒もの差が瞬時についた。

逃げたのは次の8人。

イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)らを先頭に古賀志林道に向かうイヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)らを先頭に古賀志林道に向かう photo:Kei Tsuji逃げグループを率いる小森亮平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)逃げグループを率いる小森亮平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO) photo:Kei Tsuji

初山翔(宇都宮ブリッツェン)、柿沼章(宇都宮ブリッツェン)、内間康平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)、小森亮平(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)、青柳憲輝(シマノレーシング)、永良大誠(マトリックス・パワータグ)、スティール・ヴォン・ホフ(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)、吉田隼人(ジャパンナショナルチーム)。

メイン集団はリクイガス・キャノンデール、アスタナ、ランプレ・ISD、サクソバンクのプロチームが一人づつアシスト選手を出し合い集団のペースをコントロール。アスタナの集団牽引役は当初エースとしての役割を期待されたロマン・クロイツィゲル(チェコ)だ。

3周目に突入する段階で、逃げる8人は3分30秒差を稼ぎ出す。山岳賞のかかった古賀志林道の登りでは初山が早い段階でアタック。他の選手を寄せ付けず、独走で山頂を先頭通過。チームのお膝元で開催されるジャパンカップで、まずはひとつ結果を残す。

この日メイン集団がはじき出した逃げグループに許せるタイム差は3分半。しばらくこの差のまま、付かず離れずでレースは進行。5周目の中ごろ、田野交差点でのタイム差は3分21秒。逃げる8人は6周目に設定された山岳賞を目指して古賀志林道へ入っていく。

この山岳賞を巡って青柳憲輝(シマノレーシング)とスティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)が熾烈なマッチレースを繰り広げたが、青柳の登坂力に軍配。ヴォンホフを振り切り山岳賞を獲得した。

観客が詰めかけた古賀志林道頂上付近観客が詰めかけた古賀志林道頂上付近 photo:Kei Tsuji

リクイガス・キャノンデールがメイン集団のペースを上げて古賀志林道を進むリクイガス・キャノンデールがメイン集団のペースを上げて古賀志林道を進む photo:Kei Tsujiこの周回からメイン集団もテンポを速める。太陽が顔を出し、路面がドライコンディションになると例年通りのスピーディーなレース展開へと移っていく。

7周目に入る時点でタイム差は1分43秒にまで集団は詰め寄っていく。集団内も次第にナーバスになっていき、集団をコントロールするリクイガス・キャノンデールの選手がジェリー・ベリー・ケンダの選手と小競り合いをする場面も。

ゴールまで3周を残してメイン集団から飛び出したグスタフエリック・ラーション(スウェーデン、サクソバンク・サンガード)ゴールまで3周を残してメイン集団から飛び出したグスタフエリック・ラーション(スウェーデン、サクソバンク・サンガード) photo:Kei Tsuji8周目に入りメイン集団は1分11秒まで逃げる8人を追い込む。逃げる先頭の8人は、9周目に設定される山岳賞を目指しペースを上げる。クロイツィゲルがコントロールするメイン集団は51秒遅れで古賀志林道へ。

山岳賞争いは先頭集団から内間とヴォンホフの争いになり、今度はヴォンホフが内間を振り切り先頭で山頂を通過。グスタフエリック・ラーション(スウェーデン、サクソバンク・サンガード)のアタックをきっかけに活性化し、残りの6名を飲み込んだメイン集団が逃げのすぐ後ろに迫った。

逃げる鈴木真理(シマノレーシング)とクリスティアーノ・サレルノ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)逃げる鈴木真理(シマノレーシング)とクリスティアーノ・サレルノ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Kei Tsuji結局メイン集団は逃げていたヴォンホフと内間を下りで吸収。集団はひとつにまとまった。ここでいったん安定した集団から鈴木真理(シマノレーシング)がアタック。これにクリスティアーノ・サレルノ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)が追走し、先頭は2名に。

当初はバッソのために前へ出なかったサレルノだが、後方との差が開いたことを確認してローテーションにジョイン。真理とサレルノが快調なペースで10周目に突入する。井上和郎(ブリヂストン・アンカー)、マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、サクソバンク)の2人が追走グループを形成し、10周目へ。

ゴールまで2周を残してメイン集団からアタックする西薗良太(シマノレーシング)ゴールまで2周を残してメイン集団からアタックする西薗良太(シマノレーシング) photo:Kei Tsuji10周目の古賀志林道でサレルノが真理を離して単独で山頂を通過。数秒差でランプレ・ISDに引き連れられたメイン集団が続き、ここから数名の選手が飛び出してサレルノに合流する。

ここには西谷泰治(愛三工業レーシング)、新城幸也(ジャパンナショナルチーム)、宮澤崇史(ジャパンナショナルチーム)、佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)らが入ったが、さらに後方から各チームのエースクラスの選手も追いつき、25名ほどの小集団が形成された。

先頭で最終周回に突入する新城幸也(ジャパンナショナルチーム)、マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・ISD)、ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)先頭で最終周回に突入する新城幸也(ジャパンナショナルチーム)、マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・ISD)、ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、リクイガス・キャノンデール) photo:Kei Tsujiここから平坦路でアタックしたのはダミアーノ・カルーゾ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)。これを追って福島晋一(ジャパンナショナルチーム)や畑中勇介(シマノレーシング)や新城幸也(ジャパンナショナルチーム)が飛び出す。後手に回ったクネゴは集団内でチームメイトを探す仕草を見せる。

鶴カントリークラブの登りで先行したカルーゾに、新城とマヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・ISD)が合流。先頭は3名となって最終周回に突入する。メイン集団からはクネゴがブリッジをかけ、先頭の3名に合流する。

佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)が先頭でスプリントを立ち上がる佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)が先頭でスプリントを立ち上がる photo:Kei Tsujiしかし古賀志林道で生き残ったのはモーリと新城の2名。先行する2名を追うクネゴに、登りで追いついてきたのは土井雪広(ジャパンナショナルチーム)だ。だが下りでサレルノとカルーゾ、佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)や西谷泰治(愛三工業レーシング)、清水都貴(ブリヂストン・アンカー)、畑中勇介(シマノレーシング)が追いつき追走集団が形成される。

新城とモーリは、この20人弱まで膨らんだ追走集団に15秒差でゴールを目指す。十分なタイム差をつけたかに見えた両者だが、ゴール前500mでけん制。スピードが落ちたことで、迫ってきた追走集団を見てモーリが慌ててスパートするが後の祭り。新城ともども集団に飲み込まれる。

スプリント勝利を飾ったネイサン・ハース(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)スプリント勝利を飾ったネイサン・ハース(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ) photo:Kei Tsujiここで佐野が一気にスプリントを開始。ロングスプリントで猛然とゴールを目指す佐野に合わせたのは西谷。だが左のラインをとったネイサン・ハース(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)のスプリント力が頭一つ抜きん出ていた。ここまで集団内で息を潜めていたハースが、最後の瞬間に輝きを見せた。

2位には追い込んだ西谷、3位には佐野が入った。西谷は昨年の4位からジャンプアップしたことになる。4位にはスプリントに絡んだクネゴが、5位には畑中が入っている。

優勝したハースは、今年のヘラルドサンツアーで、サクソバンクやガーミン・サーヴェロといったチームが参戦する中で総合優勝を遂げたオーストラリア期待の22歳。欧州のビッグチーム入りも囁かれる逸材で、その実力を遺憾なく発揮する結果となった。

勝利こそならなかったものの、表彰台に日本人が2人登壇し、例年以上に日本人の競技レベルの向上を印象づける大会となった。20周年の節目に、日本のロードレースの発展を確かな形で刻んだ。これからも日本におけるHCのレースとしてジャパンカップの役割は大きいものになるだろう。

2位西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)、優勝ネイサン・ハース(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)、3位佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)2位西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)、優勝ネイサン・ハース(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)、3位佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO) photo:Kei Tsuji

ジャパンカップ2011結果
1位 ネイサン・ハース(オーストラリア、ジェネシス・ウェルスアドヴァイザーズ)4h08'35"
2位 西谷泰治(愛三工業レーシング)
3位 佐野淳哉(ダンジェロ&アンティヌッチィ・株式会社NIPPO)
4位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)
5位 畑中勇介(シマノレーシング)
6位 マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・ISD)               +02"
7位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)
8位 清水都貴(ブリヂストン・アンカー)                     +04"
9位 クリスティアーノ・サレルノ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)     +07"
10位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス・キャノンデール)         +09"

text:Yufta Omata / www.cyclowired.jp
photo:Kei Tsuji / www.cyclowired.jp