ハンドルを投げ込んでフィニッシュしたクリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)とスティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ガーミン・シャープ)。その差はわずかにタイヤの幅ほど。写真判定の結果、両手を挙げてフィニッシュしたサットンの勝利が決まった。
宇都宮市の目抜き通りである宇都宮市大通りを規制して作られた1周1.55kmの直線的なコースがクリテリウムの舞台。180度ターンが2つある周回コースを選手たちは20周する。5周毎にスプリントポイントが設定されているのは例年通りだ。
クリテリウム開催5年目の今年も沿道は観客で埋まった。3周のパレード走行を経てスタートが切られると、レースは小嶋敬二の猛烈なスパートで幕開ける。ヨーロッパ選手を驚かしたスタートダッシュによってレースは1周目から高速化。アタックに次ぐアタックが繰り返され、全日本チャンピオンジャージを着る佐野淳哉(日本ナショナルチーム)や新城幸也(ユーロップカー)らの飛び出しに会場が沸く。
5周目のスプリントポイントに向けて別府史之(トレックファクトリーレーシング)が動きを見せたものの、追い上げたネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ)が先頭通過。すると6周目にようやく逃げが決まる。飛び出したマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、ティンコフ・サクソ)に3名が追いつくと、メイン集団は踏みっぱなしだったアクセルを緩めた。
ボアーロ、ラクラン・ノリス(オーストラリア、ドラパック)、マルコ・マルカート(イタリア、キャノンデール)、ピエールパオロ・デネグリ(イタリア、ヴィーニファンティーニNIPPO)の4名はメイン集団に対して15秒のリードで宇都宮市大通りを駆け抜ける。10周目と15周目のスプリントポイントはいずれもマルカートが先頭通過。
レース中盤に差し掛かるとチームスカイやトレックファクトリーレーシング、ガーミン・シャープ、ユーロップカーが集団コントロールを開始する。しばらくタイム差は10〜15秒で推移。するとフィニッシュまで2周を残し、タイム差が10秒を切ったところで先頭からボアーロが再び飛び出した。
持ち前の独走力でボアーロは粘り続けたものの最終周回を前についに吸収。そこから阿部嵩之と鈴木真理(宇都宮ブリッツェン)が集団先頭に立ってバックストレートへ。残り600mの最終コーナーに向けたポジション争いは熾烈を極めた。
リードアウトにおいて好位置をキープしたのはチームスカイとガーミン・シャープ。ネイサン・ハース(オーストラリア)に発射されたヴォンホフとベン・スウィフト(イギリス)に発射されたサットンが同時にスプリントを開始する。緩やかな登り勾配の最終ストレート。両者はハンドルを投げ込んでフィニッシュした。
チームメイトやライバルたちと言葉を交わしながら写真判定の結果を待つサットン。反射的に両手を挙げたその感覚は間違っていなかった。僅か数センチ(タイヤの幅ほど)の差で、2011年と2013年のクリテリウム優勝者ヴォンホフをサットンが下した。
「これ以上は何も望めないぐらいの結果。シーズン最後にシーズン1勝目がやってくるなんてね」。優勝が決まったサットンはチームメイトやチームスタッフと喜びを分かち合いながら言葉を運ぶ。
「スタートしてすぐにペースが上がって驚いた。身体の反応は悪かったけど、15分ぐらい経ったところでようやく身体が動きだし、逃げが決まってからは集団内で快適に走っていた。ボスウェルとバーニー(アイゼル)が集団をずっと引いてくれて、終盤に向けて徐々にペースアップ。自分はと言うと、エディ(ボアッソンハーゲン)とスウィフティに守られながら走っていた。そこから最高のリードアウトが始まったんだ」。
サットンはコフィディスとガーミンを経て2010年からチームスカイで走る30歳。トラックレースで磨いたスピードが武器のスプリンターで、グランツールには4回出場。2008年ジロ・デ・イタリアではスリップストリームの一員としてチームTTで勝利し、2011年のブエルタ・ア・エスパーニャではスプリント勝利を飾っている。
近年はリードアウト役に徹することが多かったが、この日はチームスカイのエーススプリンターを託された。「まずはエディがリードアウトしてそこからスウィフティにスイッチ。彼らのリードアウトを完璧な形で締めくくった。発射台のスウィフティが表彰台(3位)に登っているのは、リードアウトが機能した証拠だ」と振り返る。
「日本に来てから素敵な時間を過ごしている。日本のファンは素晴らしいよ。ロードレースへの愛を感じる。みんなの応援に感謝している」。5代目クリテリウムチャンピオンは宇都宮のファンに感謝した。
「昨日も言ったように、スプリントではチームスカイが強敵になると予想していた。彼らの付き位置をキープして走っていたが、最終コーナーでポジションを落としてしまった。必死に挽回したけど届かなかった」と語るのはクリテリウムスペシャルチームの一員として走ったアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)。結果は7位。日本人選手の最高位は宮澤崇史(ヴィーニファンティーニNIPPO)の8位だった。
ジャパンカップクリテリウム2014結果
1位 クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ) 41'32"(Ave:44.8km/h)
2位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ガーミン・シャープ)
3位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
4位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ヴィーニファンティーニNIPPO)
5位 ウェズリー・サルツバーガー(オーストラリア、ドラパック)
6位 ミカエル・アンデルセン(デンマーク、ティンコフ・サクソ)
7位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、クリテリウムスペシャルチーム)
8位 宮澤崇史(日本、ヴィーニファンティーニNIPPO)
9位 ヴァレリオ・コンティ(イタリア、ランプレ・メリダ)
10位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)
スプリント賞
5周目 ネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ)
10周目 マルコ・マルカート(イタリア、キャノンデール)
15周目 マルコ・マルカート(イタリア、キャノンデール)
text&photo:Kei Tsuji
宇都宮市の目抜き通りである宇都宮市大通りを規制して作られた1周1.55kmの直線的なコースがクリテリウムの舞台。180度ターンが2つある周回コースを選手たちは20周する。5周毎にスプリントポイントが設定されているのは例年通りだ。
クリテリウム開催5年目の今年も沿道は観客で埋まった。3周のパレード走行を経てスタートが切られると、レースは小嶋敬二の猛烈なスパートで幕開ける。ヨーロッパ選手を驚かしたスタートダッシュによってレースは1周目から高速化。アタックに次ぐアタックが繰り返され、全日本チャンピオンジャージを着る佐野淳哉(日本ナショナルチーム)や新城幸也(ユーロップカー)らの飛び出しに会場が沸く。
5周目のスプリントポイントに向けて別府史之(トレックファクトリーレーシング)が動きを見せたものの、追い上げたネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ)が先頭通過。すると6周目にようやく逃げが決まる。飛び出したマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、ティンコフ・サクソ)に3名が追いつくと、メイン集団は踏みっぱなしだったアクセルを緩めた。
ボアーロ、ラクラン・ノリス(オーストラリア、ドラパック)、マルコ・マルカート(イタリア、キャノンデール)、ピエールパオロ・デネグリ(イタリア、ヴィーニファンティーニNIPPO)の4名はメイン集団に対して15秒のリードで宇都宮市大通りを駆け抜ける。10周目と15周目のスプリントポイントはいずれもマルカートが先頭通過。
レース中盤に差し掛かるとチームスカイやトレックファクトリーレーシング、ガーミン・シャープ、ユーロップカーが集団コントロールを開始する。しばらくタイム差は10〜15秒で推移。するとフィニッシュまで2周を残し、タイム差が10秒を切ったところで先頭からボアーロが再び飛び出した。
持ち前の独走力でボアーロは粘り続けたものの最終周回を前についに吸収。そこから阿部嵩之と鈴木真理(宇都宮ブリッツェン)が集団先頭に立ってバックストレートへ。残り600mの最終コーナーに向けたポジション争いは熾烈を極めた。
リードアウトにおいて好位置をキープしたのはチームスカイとガーミン・シャープ。ネイサン・ハース(オーストラリア)に発射されたヴォンホフとベン・スウィフト(イギリス)に発射されたサットンが同時にスプリントを開始する。緩やかな登り勾配の最終ストレート。両者はハンドルを投げ込んでフィニッシュした。
チームメイトやライバルたちと言葉を交わしながら写真判定の結果を待つサットン。反射的に両手を挙げたその感覚は間違っていなかった。僅か数センチ(タイヤの幅ほど)の差で、2011年と2013年のクリテリウム優勝者ヴォンホフをサットンが下した。
「これ以上は何も望めないぐらいの結果。シーズン最後にシーズン1勝目がやってくるなんてね」。優勝が決まったサットンはチームメイトやチームスタッフと喜びを分かち合いながら言葉を運ぶ。
「スタートしてすぐにペースが上がって驚いた。身体の反応は悪かったけど、15分ぐらい経ったところでようやく身体が動きだし、逃げが決まってからは集団内で快適に走っていた。ボスウェルとバーニー(アイゼル)が集団をずっと引いてくれて、終盤に向けて徐々にペースアップ。自分はと言うと、エディ(ボアッソンハーゲン)とスウィフティに守られながら走っていた。そこから最高のリードアウトが始まったんだ」。
サットンはコフィディスとガーミンを経て2010年からチームスカイで走る30歳。トラックレースで磨いたスピードが武器のスプリンターで、グランツールには4回出場。2008年ジロ・デ・イタリアではスリップストリームの一員としてチームTTで勝利し、2011年のブエルタ・ア・エスパーニャではスプリント勝利を飾っている。
近年はリードアウト役に徹することが多かったが、この日はチームスカイのエーススプリンターを託された。「まずはエディがリードアウトしてそこからスウィフティにスイッチ。彼らのリードアウトを完璧な形で締めくくった。発射台のスウィフティが表彰台(3位)に登っているのは、リードアウトが機能した証拠だ」と振り返る。
「日本に来てから素敵な時間を過ごしている。日本のファンは素晴らしいよ。ロードレースへの愛を感じる。みんなの応援に感謝している」。5代目クリテリウムチャンピオンは宇都宮のファンに感謝した。
「昨日も言ったように、スプリントではチームスカイが強敵になると予想していた。彼らの付き位置をキープして走っていたが、最終コーナーでポジションを落としてしまった。必死に挽回したけど届かなかった」と語るのはクリテリウムスペシャルチームの一員として走ったアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)。結果は7位。日本人選手の最高位は宮澤崇史(ヴィーニファンティーニNIPPO)の8位だった。
ジャパンカップクリテリウム2014結果
1位 クリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ) 41'32"(Ave:44.8km/h)
2位 スティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ガーミン・シャープ)
3位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
4位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ヴィーニファンティーニNIPPO)
5位 ウェズリー・サルツバーガー(オーストラリア、ドラパック)
6位 ミカエル・アンデルセン(デンマーク、ティンコフ・サクソ)
7位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、クリテリウムスペシャルチーム)
8位 宮澤崇史(日本、ヴィーニファンティーニNIPPO)
9位 ヴァレリオ・コンティ(イタリア、ランプレ・メリダ)
10位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)
スプリント賞
5周目 ネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ)
10周目 マルコ・マルカート(イタリア、キャノンデール)
15周目 マルコ・マルカート(イタリア、キャノンデール)
text&photo:Kei Tsuji