週末に向けて熱気が高まる宇都宮市内において、ジャパンカップの第1プログラムであるチームプレゼンテーションが開催されました。オリオンスクエアに集結した各チームを、フォトレポートで紹介します。
宇都宮ブリッツェン
チームプレゼンテーションのトップバッターを務めたのは、毎年宇都宮大通りと古賀志林道を赤く染め上げる宇都宮ブリッツェン。7名と清水監督が登壇した瞬間、オリオンスクエアに詰めかけたファンの興奮はいきなり頂点に達した。
病気療養、そしてツール・ド・北海道で負った鎖骨骨折明けであまり調子が上がっていないと言う増田成幸に代わってチームを引っ張るのは、雨澤毅明とU23アジアTT王者の小野寺玲、そして先の世界選手権で逃げに乗った岡篤志と急成長中の若手選手たち。今季限りでの退団を発表し、明日のクリテリウムが現チーム最後の舞台となる鈴木真理は「明日のクリテリウムで5年間着用したジャージも最後。走ってみないとわからないけれど、いい走りがしたいですね」と謙虚なコメントを残した。
キナンサイクリングチーム
ツール・ド・北海道でマルコス・ガルシア(スペイン)が、ツール・ド・フィリピンでジャイ・クロフォード(オーストラリア)が、ツール・ド・フローレスでトマ・ルバ(フランス)が総合優勝するなど、今期アジアのステージレースで結果を残したキナンサイクリングチーム。石田監督が「ハイレベルのレースで見どころを作り、そして上位に食い込みたい」と語るチームのエースは、土曜日がスプリント力のある雨乞竜己、そして日曜日が登坂力に秀でるガルシア。
昨年ジロ・デ・イタリアを完走した山本元喜は「ツール・ド・イランで高地を走ってきたので調子は上がってきている」とコメント。非常に体が絞れた様子で、過去大会では山岳賞などを獲ってきた積極的な走りが今年も見られるか?今年Jプロツアーでスプリント勝利を収めている中島康晴も多くの声援を集めていた。
ブリヂストン アンカー サイクリングチーム
長い歴史と国内屈指の実力を誇るUCIコンチネンタルチームのブリヂストン アンカー サイクリングチーム。土曜日のクリテリウムは、宇都宮に馴染みが深いスプリンター大久保陣やU23全日本TTチャンピオンの新城雄大、鈴木龍らスピードマンで上位を狙う。日曜日のロードレースはツール・ド・北海道で総合2位となった西薗良太や前全日本チャンピオンの初山翔、石橋学ら日本屈指のオールラウンダーたちで勝利を目指す。
クリテリウムに絞って結果を狙う大久保は「ブリッツェンのときとは違う緊張感で臨むレースですが、やはり宇都宮のファンの前でいい走りがしたい」と意気込んだ。先日現役引退を発表したばかりの西薗は「大学生の時に初めて招聘されたのがこのジャパンカップでした。このレースで引退を迎えるのは感慨深いです。厳しい天候になりそうですが、逆に番狂わせを起こさなければいけない自分たちとしてはチャンスです」と語った。
マトリックス パワータグ
マトリックス パワータグのプレゼンテーションは、安原監督の怒涛のトークとフルメンバー出演のコントで全くレースに関して話題が及ばず、会場を笑いの渦に巻き込んだ。毎年会場の雰囲気を和やかにしてくれる同チームだが、その魅力は漫才だけではない。
今年Jプロツアーで2度も表彰台を独占したチーム力は誰もが認めるところだ。出場メンバーはルビーレッドジャージを獲得し、ツール・ド・熊野で総合優勝したホセ・ビセンテ(スペイン)をはじめ、12度目の出場となる土井雪広、2011年大会では3位の佐野淳哉という元全日本チャンピオンたちが揃い踏み。土曜日には「宇都宮」「クリテリウム」というキーワードに強い国内トップスプリンターである吉田隼人と、欧州トラック選手権を制した経験のあるアイラン・フェルナンデス(スペイン)が狙ってくるはずだ。
那須ブラーゼン
ブリッツェンと共に毎年宇都宮の秋を大いに沸かせる那須ブラーゼンは、Jプロツアー第2戦宇都宮ロードで優勝した吉岡直哉をエースに日曜日に臨む。かなり絞れている印象の吉岡は「Jプロツアーで勝利した土地なので個人としてもチームとしても思い出の地。新しい思い出を作りたい」と言う。
クリテリウムではスプリント力のある下島将輝がエースを担う。昨年大会は怪我明けの復帰戦ながら途中の逃げに乗っており「昨年は井上和郎さんにやられて逃してしまったポイント賞を狙いたい」とリベンジを誓う。チーム名の語源でもある風をここジャパンカップで巻き起こせるか?若き選手たちに注目が集まる。
チーム右京
粒ぞろいのチーム力を武器にアジア各国のステージレースで活躍し、UCIアジアツアーランキング1位に輝いたチーム右京。片山右京監督は「チーム創設時は出場権すら得られなかったジャパンカップ。去年はクリテで2位、ロードで5位。更に上の成績を狙っていきたいですね」と目標を語る。
ツアー・オブ・ジャパン総合優勝3連覇を果たしたオスカル・プジョル(スペイン)は、台湾のヒルクライムレースからの移動中で不在だったが、そこでの結果はヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)に次ぐ2位とシーズン終盤の今でもコンディションは落としていない様子。
全日本王者の畑中は「毎年言っていることですが、プロを目指すきっかけとなったジャパンカップで良い走りがしたい。過去に表彰台には登っている(2010年3位)ので、狙うはテッペンのみ」と壇上でコメント。昨年クリテリウムで2位に甘んじたジョン・アベラストゥリ(スペイン)は悲願の優勝なるか。アベラストゥリと、プジョルのTOJ優勝を献身的にサポートしたネイサン・アール(オーストラリア)は来年格上のプロチームへの移籍が決まっているため、ジャパンカップが現チームラストレースとなるという。
ジャパン・ナショナル・チーム
新デザインジャージのお披露目会を兼ねた日本ナショナルチーム。今年は出場権を得られなかったシマノレーシングから入部正太朗と木村圭佑、愛三工業レーシングから岡本隼、鹿屋体育大学の山本大喜、そして石上優大という5名をラインアップしてきた。
浅田彰監督は「今年U23世代はネイションズカップなど非常に厳しいレースを戦ってきました。アジア王者の岡本、TOJで18位とUCIポイントを獲った山本大喜など、力のある若手が揃っています」とメンバーを紹介。世界選手権U23で単独ブリッジした山本は2年前のオープンレースで優勝しており、得意の登坂力を活かせるか。格上の選手をも喰うスプリントを武器にするU23アジア王者の岡本は当然クリテリウム狙い。新しいナショナルジャージを纏う選手たちはスタート直後のアタック合戦にも積極的に加わってくるはずだ。
クリテリウムスペシャルライダーズ
毎年おなじみの「クリテリウムスペシャルライダーズ」には、今年も豪華選手が集った。まず注目は、過去に2度ジャパンカップを制覇しているネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)が1日限りで宇都宮を走ること。出場は本人の熱望が叶ったもので「様々なスペシャリストが揃っているので、良いショーを見せたい」と言う。S級競輪選手の新田祐大と渡邉正光は史上初の競輪選手の完走なるか?宇都宮ブリッツェンのメンバーとしてシクロクロスを走る小坂光、ホビーレーサーの代表として国内屈指のスピードレースに挑む2015年の全日本TT王者、中村龍太郎(イナーメ信濃山形)の2人にも注目だ。
国内チームに続いてオリオンスクエアのステージに上がったのは7つの海外チーム。最後に登場したトレック・セガフレードのアルベルト・コンタドール(スペイン)がステージに上がると会場は熱狂に包まれた。
アタッキ・チーム・グスト
ジャパンカップではお馴染みの存在となった台湾のアタッキ・チーム・グスト。メンバーはオーストラリア人2名と台湾人2名の合計4名で、数の上では不利な状況だが、エースを担うベンジャミン・ヒル(オーストラリア)は4月のツール・ド・栃木(UCI2.2)で総合優勝を果たした実力者。2016年のツアー・オブ・タイランドでも総合優勝を果たしているオールラウンダーがビッグチームに挑む。なお、ステージを去る際にキャラクターの「アタ吉」が転倒して頭部が外れるという大惨事が発生したものの、優秀なMCの配慮によって何も起こらなかったことに。
チーム ノボ ノルディスク
こちらもジャパンカップ常連のチーム ノボ ノルディスク。1型糖尿病患者だけで構成された特殊なチームだが、国内外で幅広い活躍を見せている。2015年大会25位のシャルル・プラネ(フランス)やダビ・ロサノ(スペイン)らを中心に4年連続出場のジャパンカップに挑む。
NIPPO・ヴィーニファンティーニ
2005年と2008年のジャパンカップ覇者で、これが11回目の来日となるダミアーノ・クネゴ(イタリア)擁するNIPPO・ヴィーニファンティーニ。36歳になった「ピッコロプリンチペ」は「チームには強いメンバーが揃っているし、この雨が味方になればいい」とコメント。なお、小林海はクリテリウムのみの出場で、日曜日のロードレースにはイヴァン・サンタロミータ(イタリア)が出場する。かつてクイックステップやリクイガス、BMCレーシング・チームに所属していたサンタロミータと、直前のイタリアレース連戦で安定した成績を残したマルコ・カノラ(イタリア)が戦略のカギを握る。
キャノンデール・ドラパック・プロフェッショナル・サイクリング・チーム
ディフェンディングチャンピオンのダヴィデ・ヴィッレッラ(イタリア)擁するキャノンデール・ドラパック・プロフェッショナル・サイクリング・チーム。ブエルタ・ア・エスパーニャで山岳賞を獲得し、2週間前のイル・ロンバルディアで15位に入っているヴィッレッラ(来季アスタナに移籍)がもちろんチームリーダーで、登坂力のあるダヴィデ・フォルモロ(イタリア)やアレックス・ハウズ(アメリカ)らも揃う。「雨が降っても条件はみんな一緒なので、作戦は変わらない」とヴィッレッラ。おそらく出場チームの中で最も高い戦力を有しており、大会連覇に向けて準備はできている様子だ。
BMCレーシング・チーム
7月のツール・ド・フランスでの落車リタイア以降、久々のレース出場となるリッチー・ポート(オーストラリア)を先頭にBMCレーシング・チームが登場。オーストラリアのハイシーズンである1月に向けてコンディショニングを開始したばかりのポートは(雨に見舞われた)2013年以来2度目のジャパンカップ出場。体重も絞り込んでいない状態であり、エースはこのジャパンカップが現役最終戦となるマルティン・エルミガー(スイス)となる見通し。育成チームからスタジエール(研修生)として加わった20歳のブラム・ヴェルテン(オランダ)がクリテリウムで勝利を狙う。
チーム・ロットNL・ユンボ
オランダのチーム・ロットNL・ユンボはジロ・デ・イタリアでこれまでステージ2勝しているエンリーコ・バッタリン(イタリア)を中心に据えた布陣。「体調はいいけど雨が降るとタフなレースになる」とバッタリーン。登れるスプリンターとして知られるフアン・ホセ・ロバト(スペイン)や、クリテリウム・デュ・ドーフィネでステージ優勝して山岳賞を獲得したクーン・ボーマン(オランダ)も揃っており、初出場ながらクリテリウムとロードレースで勝利を狙えるメンバーだ。
トレック・セガフレード
ひときわ大きな声援を受けたのが最後に登場したトレック・セガフレード。現役引退後、久々にレースに出場することになるアルベルト・コンタドール(スペイン)が登場すると会場が大歓声に包まれるとともに、無数のスペイン国旗が翻った。クリテリウムで大会3連覇を狙うのは、スペシャルバイクに乗り、ヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー)らのアシストを受ける別府史之。ヤロスラフ・ポポヴィッチ監督は「まずはフミのクリテリウム3連覇を狙う」と意気込む。
長いキャリアの中で幾度となくそうしてきたように、「ブエノ」と開口一番言って話し始めたのはコンタドール。「日本に着いた1分後からファンに温かく迎えてもらった。これが最後の来日にならないことを願っている。これほど多くのスペイン国旗を日本で見るとは思っていなかったし、地元スペインに帰ってきた気分」と想像以上の歓迎に驚いた様子だった。
text&photo:Kei Tsuji
text:So Isobe
photo:Makoto.AYANO
宇都宮ブリッツェン
チームプレゼンテーションのトップバッターを務めたのは、毎年宇都宮大通りと古賀志林道を赤く染め上げる宇都宮ブリッツェン。7名と清水監督が登壇した瞬間、オリオンスクエアに詰めかけたファンの興奮はいきなり頂点に達した。
病気療養、そしてツール・ド・北海道で負った鎖骨骨折明けであまり調子が上がっていないと言う増田成幸に代わってチームを引っ張るのは、雨澤毅明とU23アジアTT王者の小野寺玲、そして先の世界選手権で逃げに乗った岡篤志と急成長中の若手選手たち。今季限りでの退団を発表し、明日のクリテリウムが現チーム最後の舞台となる鈴木真理は「明日のクリテリウムで5年間着用したジャージも最後。走ってみないとわからないけれど、いい走りがしたいですね」と謙虚なコメントを残した。
キナンサイクリングチーム
ツール・ド・北海道でマルコス・ガルシア(スペイン)が、ツール・ド・フィリピンでジャイ・クロフォード(オーストラリア)が、ツール・ド・フローレスでトマ・ルバ(フランス)が総合優勝するなど、今期アジアのステージレースで結果を残したキナンサイクリングチーム。石田監督が「ハイレベルのレースで見どころを作り、そして上位に食い込みたい」と語るチームのエースは、土曜日がスプリント力のある雨乞竜己、そして日曜日が登坂力に秀でるガルシア。
昨年ジロ・デ・イタリアを完走した山本元喜は「ツール・ド・イランで高地を走ってきたので調子は上がってきている」とコメント。非常に体が絞れた様子で、過去大会では山岳賞などを獲ってきた積極的な走りが今年も見られるか?今年Jプロツアーでスプリント勝利を収めている中島康晴も多くの声援を集めていた。
ブリヂストン アンカー サイクリングチーム
長い歴史と国内屈指の実力を誇るUCIコンチネンタルチームのブリヂストン アンカー サイクリングチーム。土曜日のクリテリウムは、宇都宮に馴染みが深いスプリンター大久保陣やU23全日本TTチャンピオンの新城雄大、鈴木龍らスピードマンで上位を狙う。日曜日のロードレースはツール・ド・北海道で総合2位となった西薗良太や前全日本チャンピオンの初山翔、石橋学ら日本屈指のオールラウンダーたちで勝利を目指す。
クリテリウムに絞って結果を狙う大久保は「ブリッツェンのときとは違う緊張感で臨むレースですが、やはり宇都宮のファンの前でいい走りがしたい」と意気込んだ。先日現役引退を発表したばかりの西薗は「大学生の時に初めて招聘されたのがこのジャパンカップでした。このレースで引退を迎えるのは感慨深いです。厳しい天候になりそうですが、逆に番狂わせを起こさなければいけない自分たちとしてはチャンスです」と語った。
マトリックス パワータグ
マトリックス パワータグのプレゼンテーションは、安原監督の怒涛のトークとフルメンバー出演のコントで全くレースに関して話題が及ばず、会場を笑いの渦に巻き込んだ。毎年会場の雰囲気を和やかにしてくれる同チームだが、その魅力は漫才だけではない。
今年Jプロツアーで2度も表彰台を独占したチーム力は誰もが認めるところだ。出場メンバーはルビーレッドジャージを獲得し、ツール・ド・熊野で総合優勝したホセ・ビセンテ(スペイン)をはじめ、12度目の出場となる土井雪広、2011年大会では3位の佐野淳哉という元全日本チャンピオンたちが揃い踏み。土曜日には「宇都宮」「クリテリウム」というキーワードに強い国内トップスプリンターである吉田隼人と、欧州トラック選手権を制した経験のあるアイラン・フェルナンデス(スペイン)が狙ってくるはずだ。
那須ブラーゼン
ブリッツェンと共に毎年宇都宮の秋を大いに沸かせる那須ブラーゼンは、Jプロツアー第2戦宇都宮ロードで優勝した吉岡直哉をエースに日曜日に臨む。かなり絞れている印象の吉岡は「Jプロツアーで勝利した土地なので個人としてもチームとしても思い出の地。新しい思い出を作りたい」と言う。
クリテリウムではスプリント力のある下島将輝がエースを担う。昨年大会は怪我明けの復帰戦ながら途中の逃げに乗っており「昨年は井上和郎さんにやられて逃してしまったポイント賞を狙いたい」とリベンジを誓う。チーム名の語源でもある風をここジャパンカップで巻き起こせるか?若き選手たちに注目が集まる。
チーム右京
粒ぞろいのチーム力を武器にアジア各国のステージレースで活躍し、UCIアジアツアーランキング1位に輝いたチーム右京。片山右京監督は「チーム創設時は出場権すら得られなかったジャパンカップ。去年はクリテで2位、ロードで5位。更に上の成績を狙っていきたいですね」と目標を語る。
ツアー・オブ・ジャパン総合優勝3連覇を果たしたオスカル・プジョル(スペイン)は、台湾のヒルクライムレースからの移動中で不在だったが、そこでの結果はヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)に次ぐ2位とシーズン終盤の今でもコンディションは落としていない様子。
全日本王者の畑中は「毎年言っていることですが、プロを目指すきっかけとなったジャパンカップで良い走りがしたい。過去に表彰台には登っている(2010年3位)ので、狙うはテッペンのみ」と壇上でコメント。昨年クリテリウムで2位に甘んじたジョン・アベラストゥリ(スペイン)は悲願の優勝なるか。アベラストゥリと、プジョルのTOJ優勝を献身的にサポートしたネイサン・アール(オーストラリア)は来年格上のプロチームへの移籍が決まっているため、ジャパンカップが現チームラストレースとなるという。
ジャパン・ナショナル・チーム
新デザインジャージのお披露目会を兼ねた日本ナショナルチーム。今年は出場権を得られなかったシマノレーシングから入部正太朗と木村圭佑、愛三工業レーシングから岡本隼、鹿屋体育大学の山本大喜、そして石上優大という5名をラインアップしてきた。
浅田彰監督は「今年U23世代はネイションズカップなど非常に厳しいレースを戦ってきました。アジア王者の岡本、TOJで18位とUCIポイントを獲った山本大喜など、力のある若手が揃っています」とメンバーを紹介。世界選手権U23で単独ブリッジした山本は2年前のオープンレースで優勝しており、得意の登坂力を活かせるか。格上の選手をも喰うスプリントを武器にするU23アジア王者の岡本は当然クリテリウム狙い。新しいナショナルジャージを纏う選手たちはスタート直後のアタック合戦にも積極的に加わってくるはずだ。
クリテリウムスペシャルライダーズ
毎年おなじみの「クリテリウムスペシャルライダーズ」には、今年も豪華選手が集った。まず注目は、過去に2度ジャパンカップを制覇しているネイサン・ハース(オーストラリア、ディメンションデータ)が1日限りで宇都宮を走ること。出場は本人の熱望が叶ったもので「様々なスペシャリストが揃っているので、良いショーを見せたい」と言う。S級競輪選手の新田祐大と渡邉正光は史上初の競輪選手の完走なるか?宇都宮ブリッツェンのメンバーとしてシクロクロスを走る小坂光、ホビーレーサーの代表として国内屈指のスピードレースに挑む2015年の全日本TT王者、中村龍太郎(イナーメ信濃山形)の2人にも注目だ。
国内チームに続いてオリオンスクエアのステージに上がったのは7つの海外チーム。最後に登場したトレック・セガフレードのアルベルト・コンタドール(スペイン)がステージに上がると会場は熱狂に包まれた。
アタッキ・チーム・グスト
ジャパンカップではお馴染みの存在となった台湾のアタッキ・チーム・グスト。メンバーはオーストラリア人2名と台湾人2名の合計4名で、数の上では不利な状況だが、エースを担うベンジャミン・ヒル(オーストラリア)は4月のツール・ド・栃木(UCI2.2)で総合優勝を果たした実力者。2016年のツアー・オブ・タイランドでも総合優勝を果たしているオールラウンダーがビッグチームに挑む。なお、ステージを去る際にキャラクターの「アタ吉」が転倒して頭部が外れるという大惨事が発生したものの、優秀なMCの配慮によって何も起こらなかったことに。
チーム ノボ ノルディスク
こちらもジャパンカップ常連のチーム ノボ ノルディスク。1型糖尿病患者だけで構成された特殊なチームだが、国内外で幅広い活躍を見せている。2015年大会25位のシャルル・プラネ(フランス)やダビ・ロサノ(スペイン)らを中心に4年連続出場のジャパンカップに挑む。
NIPPO・ヴィーニファンティーニ
2005年と2008年のジャパンカップ覇者で、これが11回目の来日となるダミアーノ・クネゴ(イタリア)擁するNIPPO・ヴィーニファンティーニ。36歳になった「ピッコロプリンチペ」は「チームには強いメンバーが揃っているし、この雨が味方になればいい」とコメント。なお、小林海はクリテリウムのみの出場で、日曜日のロードレースにはイヴァン・サンタロミータ(イタリア)が出場する。かつてクイックステップやリクイガス、BMCレーシング・チームに所属していたサンタロミータと、直前のイタリアレース連戦で安定した成績を残したマルコ・カノラ(イタリア)が戦略のカギを握る。
キャノンデール・ドラパック・プロフェッショナル・サイクリング・チーム
ディフェンディングチャンピオンのダヴィデ・ヴィッレッラ(イタリア)擁するキャノンデール・ドラパック・プロフェッショナル・サイクリング・チーム。ブエルタ・ア・エスパーニャで山岳賞を獲得し、2週間前のイル・ロンバルディアで15位に入っているヴィッレッラ(来季アスタナに移籍)がもちろんチームリーダーで、登坂力のあるダヴィデ・フォルモロ(イタリア)やアレックス・ハウズ(アメリカ)らも揃う。「雨が降っても条件はみんな一緒なので、作戦は変わらない」とヴィッレッラ。おそらく出場チームの中で最も高い戦力を有しており、大会連覇に向けて準備はできている様子だ。
BMCレーシング・チーム
7月のツール・ド・フランスでの落車リタイア以降、久々のレース出場となるリッチー・ポート(オーストラリア)を先頭にBMCレーシング・チームが登場。オーストラリアのハイシーズンである1月に向けてコンディショニングを開始したばかりのポートは(雨に見舞われた)2013年以来2度目のジャパンカップ出場。体重も絞り込んでいない状態であり、エースはこのジャパンカップが現役最終戦となるマルティン・エルミガー(スイス)となる見通し。育成チームからスタジエール(研修生)として加わった20歳のブラム・ヴェルテン(オランダ)がクリテリウムで勝利を狙う。
チーム・ロットNL・ユンボ
オランダのチーム・ロットNL・ユンボはジロ・デ・イタリアでこれまでステージ2勝しているエンリーコ・バッタリン(イタリア)を中心に据えた布陣。「体調はいいけど雨が降るとタフなレースになる」とバッタリーン。登れるスプリンターとして知られるフアン・ホセ・ロバト(スペイン)や、クリテリウム・デュ・ドーフィネでステージ優勝して山岳賞を獲得したクーン・ボーマン(オランダ)も揃っており、初出場ながらクリテリウムとロードレースで勝利を狙えるメンバーだ。
トレック・セガフレード
ひときわ大きな声援を受けたのが最後に登場したトレック・セガフレード。現役引退後、久々にレースに出場することになるアルベルト・コンタドール(スペイン)が登場すると会場が大歓声に包まれるとともに、無数のスペイン国旗が翻った。クリテリウムで大会3連覇を狙うのは、スペシャルバイクに乗り、ヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー)らのアシストを受ける別府史之。ヤロスラフ・ポポヴィッチ監督は「まずはフミのクリテリウム3連覇を狙う」と意気込む。
長いキャリアの中で幾度となくそうしてきたように、「ブエノ」と開口一番言って話し始めたのはコンタドール。「日本に着いた1分後からファンに温かく迎えてもらった。これが最後の来日にならないことを願っている。これほど多くのスペイン国旗を日本で見るとは思っていなかったし、地元スペインに帰ってきた気分」と想像以上の歓迎に驚いた様子だった。
text&photo:Kei Tsuji
text:So Isobe
photo:Makoto.AYANO