レース距離が短縮され激しい混戦となったジャパンカップ2017。マルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ)が精鋭5名による小集団スプリントを制し、大会史上初となるクリテリウムとロードレース連続優勝を成し遂げた。
第26回ジャパンカップを迎えた宇都宮森林公園は、マイケル・ロジャース(当時サクソバンク)が勝利した2013年大会を思い起こさせる強い雨雲の下にあった。気温こそ低くはないものの、時を追うごとに強くなる雨が選手の身体を冷やし、路面にたくさんの水たまりを作り、古賀志林道のダウンヒルをより滑りやすくした。
悪天候によって周回数を14周から10周回へと短縮されることが発表され、レース距離は144.2kmから41.2km減らされた103kmに。雨、風、短距離と激しいサバイバルレースを演出する要素が出揃う中、69名の選手たちが走り出す。
古賀志林道に至る平坦区間では逃げ狙いのアタック合戦が勃発するものの、決定的なリードは奪えない。全日本王者畑中勇介(チーム右京)のアタックは封じられ、ダウンヒルを経て佐野淳哉(マトリックス パワータグ)や、別府史之(トレック・セガフレード)らを含む大きな逃げグループが生まれた。
2回目の古賀志林道で逃げグループがふるいに掛けられ、アントワン・トルーク(オランダ、ロットNL・ユンボ)、ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)、トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム)、初山翔(ブリヂストン アンカー)という4名が前方で抜け出した。苦しげに走るフォルモロはやがて遅れ、追走グループに吸収。この古賀志山頂ではルバが最初の山岳賞を射止めている。別府が入った追走グループのメンバーは以下の通り。
佐野淳哉(マトリックス パワータグ)
ホセ・ヴィセンテ・トリビオ(スペイン、マトリックス パワータグ)
別府史之(トレック・セガフレード)
平塚吉光(チーム右京)
アラン・マランゴーニ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ)
ダニロ・ヴィス(スイス、BMCレーシング)
ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)
吉岡直哉(那須ブラーゼン)
西薗良太(ブリヂストン アンカー)
4つのワールドツアーチーム全てが前方にメンバーを送り込む、近年稀に見る展開。追走グループが逃げる3名を捕まえるかと思えたが、3周回目のコントロールライン上では30秒差、その後の古賀志林道頂上では45秒差、更にその後の下り終わりでは1分差と徐々に距離が遠くなっていく。追走に入った別府は「自分たちが先頭だと思っている選手がいて、積極的にスピードが上がらなかった。自分でも牽いたものの上手くローテーションが回りませんでした」と後に振り返っている。
4周回目(2回目)の山岳賞はトルークと争った初山が先着。快調にローテーションを回す3名は追走グループ合流を許さない。一方、メイン集団ではメンバーを送り損ねた宇都宮ブリッツェンが牽引を開始する。自ら戦力を削ぎながらの作戦はおよそ1周を要して成功し、鈴木譲と雨澤穀明が追走集団に飛びついた。
同時にアイラン・フェルナンデス(スペイン、マトリックス パワータグ)、フアン・ホセ・ロバト(スペイン、ロットNL・ユンボ)、クーン・デコルト(オランダ、トレック・セガフレード)、ヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)、イヴァン・サンタロミータ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ)もジャンプしたため、追走グループは16名に膨れ上がる。
スタート人数の1/4以上が逃げる状況に反応したのは、前回覇者ダヴィデ・ヴィッレッラ(イタリア)を擁するキャノンデール・ドラパックだった。ワールドツアーチームの「正攻法」を選択したグリーンチームが集団牽引を開始し、すぐさま逃げ切りの可能性のある追走グループを引き戻す。
先頭でトルークが3度目の山岳賞を獲った6周目にもメイン集団が動いた。全ての逃げにメンバーを送り込むことを狙ったロットNL・ユンボからはクーン・ボーマン(オランダ)が、NIPPO・ヴィーニファンティーニからはイヴァン・サンタロミータとマルコ・カノラ(共にイタリア)が、そしてアイラン・フェルナンデス(スペイン、マトリックス パワータグ)が新たな追走を形成。最有力候補と目されていたカノラの逃げに加え、7周目終盤にはフアン・ホセ・ロバト(スペイン、ロットNLユンボ)とネイサン・アール(オーストラリア、チーム右京)も合流する。しかし、この動きはキャノンデール・ドラパックの執拗なチェックによって残り3周で潰された。
すると、これまで状況の沈静化を図っていたキャノンデール・ドラパックが攻勢に転じる。古賀志林道でヴィッレッラがアタックし、猛追する集団からトレック・セガフレードのエースを担ったストゥイヴェンが合流。2人は平坦区間を飛ばし、NIPPO・ヴィーニファンティーニが牽くメイン集団から逃げつつ前を追った。
しかし、ペースを落とさず走る先頭3名に対して2人の追撃はわずかに届かない。力尽き、「KOMで逃げグループを捕まえられると思っていたけれど、ヤスペルが前を牽かなかったので難しかった。もし前に追いつければスプリントで勝つ可能性はあったと思うので残念」と悔やむヴィッレッラを、メイン集団から抜け出したカノラ、ベンジャミン・プラデス(スペイン、チーム右京)、そして雨澤穀明(宇都宮ブリッツェン)がパス。最初から逃げていた3名に追いついたことで6名となったエスケープが逃げ切りを目指して再加速した。
最後の古賀志林道では力を使った初山が脱落し、カノラとプラデスに対して一時遅れたトルーク、ルバ、雨澤もダウンヒルで復帰。5名はペースの上がらない集団に対して30秒リードで田野町交差点(残り3km)を曲がった。
アップダウン区間ではプラデスが抜け出しを試みるが、カノラは余裕を持って対処し、5名のままゴール勝負へ。残り200mで5番手から雨澤が仕掛けたが、それを振り向きざまに確認したカノラがスプリントを開始。対抗するプラデスを置き去りにする爆発力でリードを築き、何度もガッツポーズを繰り返したカノラが史上初のクリテリウムとロードレース連続勝利を成し遂げた。
「非常に難しいレースだった。サンタロミータや中根らチームメイトのサポートのおかげでフレッシュな状態で最終周回に入ることができたんだ。自分自身勝てるとは思っていなかった」とは、冷静にレースを進めたカノラ。フィニッシュ直後に駆けつけたクネゴや中根、サンタロミータと抱き合った。
プラデスが2位に入り、スプリントでトルークとルバをパスした雨澤が地元・宇都宮に3位表彰台をもたらした。今年U23ナショナルチームの一員として海外遠征を繰り返し、Jプロツアーでも2勝を挙げた雨澤だが、「今回3位には入りましたが、世界選手権で感じた世界との差はまだあると思っています」と謙虚な姿勢を崩さない。「ナショナルチームの遠征などで不在の期間が多くチームには迷惑をかけたので、こういう形で恩返し出来たのは良かった」と記者会見で語った。
34秒差で入った後続集団ではストゥイヴェンが頭を獲って5位。ベンジャミン・ヒル(オーストラリア、アタッキ・チーム・グスト)、エンリーコ・バッタリン(イタリア、ロット・NLユンボ)、中盤まで追走に入ったヴィスに次ぐ10位に畑中が入った。
ジャパンカップ2017結果
1位 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ) 2:45'37"
2位 ベンジャミン・プラデス・レヴェルテル(スペイン、チーム右京)
3位 雨澤穀明(宇都宮ブリッツェン)
4位 アントワン・トルーク(オランダ、ロットNLユンボ)
5位 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム)
6位 ヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) +34"
7位 ベンジャミン・ヒル(オーストラリア、アタッキ・チーム・グスト)
8位 エンリーコ・バッタリン(イタリア、チーム・ロットNL・ユンボ)
9位 ダニロ・ヴィス(スイス、BMCレーシング・チーム)
10位 畑中勇介(チーム右京)
山岳賞
2周目:トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム)
4周目:初山翔(ブリヂストン アンカー サイクリングチーム)
6、8周目:アントワン・トルーク (オランダ、チーム・ロットNL・ユンボ)
text:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO、Kei Tsuji、Satoru Kato
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第26回ジャパンカップを迎えた宇都宮森林公園は、マイケル・ロジャース(当時サクソバンク)が勝利した2013年大会を思い起こさせる強い雨雲の下にあった。気温こそ低くはないものの、時を追うごとに強くなる雨が選手の身体を冷やし、路面にたくさんの水たまりを作り、古賀志林道のダウンヒルをより滑りやすくした。
悪天候によって周回数を14周から10周回へと短縮されることが発表され、レース距離は144.2kmから41.2km減らされた103kmに。雨、風、短距離と激しいサバイバルレースを演出する要素が出揃う中、69名の選手たちが走り出す。
古賀志林道に至る平坦区間では逃げ狙いのアタック合戦が勃発するものの、決定的なリードは奪えない。全日本王者畑中勇介(チーム右京)のアタックは封じられ、ダウンヒルを経て佐野淳哉(マトリックス パワータグ)や、別府史之(トレック・セガフレード)らを含む大きな逃げグループが生まれた。
2回目の古賀志林道で逃げグループがふるいに掛けられ、アントワン・トルーク(オランダ、ロットNL・ユンボ)、ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)、トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム)、初山翔(ブリヂストン アンカー)という4名が前方で抜け出した。苦しげに走るフォルモロはやがて遅れ、追走グループに吸収。この古賀志山頂ではルバが最初の山岳賞を射止めている。別府が入った追走グループのメンバーは以下の通り。
佐野淳哉(マトリックス パワータグ)
ホセ・ヴィセンテ・トリビオ(スペイン、マトリックス パワータグ)
別府史之(トレック・セガフレード)
平塚吉光(チーム右京)
アラン・マランゴーニ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ)
ダニロ・ヴィス(スイス、BMCレーシング)
ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)
吉岡直哉(那須ブラーゼン)
西薗良太(ブリヂストン アンカー)
4つのワールドツアーチーム全てが前方にメンバーを送り込む、近年稀に見る展開。追走グループが逃げる3名を捕まえるかと思えたが、3周回目のコントロールライン上では30秒差、その後の古賀志林道頂上では45秒差、更にその後の下り終わりでは1分差と徐々に距離が遠くなっていく。追走に入った別府は「自分たちが先頭だと思っている選手がいて、積極的にスピードが上がらなかった。自分でも牽いたものの上手くローテーションが回りませんでした」と後に振り返っている。
4周回目(2回目)の山岳賞はトルークと争った初山が先着。快調にローテーションを回す3名は追走グループ合流を許さない。一方、メイン集団ではメンバーを送り損ねた宇都宮ブリッツェンが牽引を開始する。自ら戦力を削ぎながらの作戦はおよそ1周を要して成功し、鈴木譲と雨澤穀明が追走集団に飛びついた。
同時にアイラン・フェルナンデス(スペイン、マトリックス パワータグ)、フアン・ホセ・ロバト(スペイン、ロットNL・ユンボ)、クーン・デコルト(オランダ、トレック・セガフレード)、ヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)、イヴァン・サンタロミータ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ)もジャンプしたため、追走グループは16名に膨れ上がる。
スタート人数の1/4以上が逃げる状況に反応したのは、前回覇者ダヴィデ・ヴィッレッラ(イタリア)を擁するキャノンデール・ドラパックだった。ワールドツアーチームの「正攻法」を選択したグリーンチームが集団牽引を開始し、すぐさま逃げ切りの可能性のある追走グループを引き戻す。
先頭でトルークが3度目の山岳賞を獲った6周目にもメイン集団が動いた。全ての逃げにメンバーを送り込むことを狙ったロットNL・ユンボからはクーン・ボーマン(オランダ)が、NIPPO・ヴィーニファンティーニからはイヴァン・サンタロミータとマルコ・カノラ(共にイタリア)が、そしてアイラン・フェルナンデス(スペイン、マトリックス パワータグ)が新たな追走を形成。最有力候補と目されていたカノラの逃げに加え、7周目終盤にはフアン・ホセ・ロバト(スペイン、ロットNLユンボ)とネイサン・アール(オーストラリア、チーム右京)も合流する。しかし、この動きはキャノンデール・ドラパックの執拗なチェックによって残り3周で潰された。
すると、これまで状況の沈静化を図っていたキャノンデール・ドラパックが攻勢に転じる。古賀志林道でヴィッレッラがアタックし、猛追する集団からトレック・セガフレードのエースを担ったストゥイヴェンが合流。2人は平坦区間を飛ばし、NIPPO・ヴィーニファンティーニが牽くメイン集団から逃げつつ前を追った。
しかし、ペースを落とさず走る先頭3名に対して2人の追撃はわずかに届かない。力尽き、「KOMで逃げグループを捕まえられると思っていたけれど、ヤスペルが前を牽かなかったので難しかった。もし前に追いつければスプリントで勝つ可能性はあったと思うので残念」と悔やむヴィッレッラを、メイン集団から抜け出したカノラ、ベンジャミン・プラデス(スペイン、チーム右京)、そして雨澤穀明(宇都宮ブリッツェン)がパス。最初から逃げていた3名に追いついたことで6名となったエスケープが逃げ切りを目指して再加速した。
最後の古賀志林道では力を使った初山が脱落し、カノラとプラデスに対して一時遅れたトルーク、ルバ、雨澤もダウンヒルで復帰。5名はペースの上がらない集団に対して30秒リードで田野町交差点(残り3km)を曲がった。
アップダウン区間ではプラデスが抜け出しを試みるが、カノラは余裕を持って対処し、5名のままゴール勝負へ。残り200mで5番手から雨澤が仕掛けたが、それを振り向きざまに確認したカノラがスプリントを開始。対抗するプラデスを置き去りにする爆発力でリードを築き、何度もガッツポーズを繰り返したカノラが史上初のクリテリウムとロードレース連続勝利を成し遂げた。
「非常に難しいレースだった。サンタロミータや中根らチームメイトのサポートのおかげでフレッシュな状態で最終周回に入ることができたんだ。自分自身勝てるとは思っていなかった」とは、冷静にレースを進めたカノラ。フィニッシュ直後に駆けつけたクネゴや中根、サンタロミータと抱き合った。
プラデスが2位に入り、スプリントでトルークとルバをパスした雨澤が地元・宇都宮に3位表彰台をもたらした。今年U23ナショナルチームの一員として海外遠征を繰り返し、Jプロツアーでも2勝を挙げた雨澤だが、「今回3位には入りましたが、世界選手権で感じた世界との差はまだあると思っています」と謙虚な姿勢を崩さない。「ナショナルチームの遠征などで不在の期間が多くチームには迷惑をかけたので、こういう形で恩返し出来たのは良かった」と記者会見で語った。
34秒差で入った後続集団ではストゥイヴェンが頭を獲って5位。ベンジャミン・ヒル(オーストラリア、アタッキ・チーム・グスト)、エンリーコ・バッタリン(イタリア、ロット・NLユンボ)、中盤まで追走に入ったヴィスに次ぐ10位に畑中が入った。
ジャパンカップ2017結果
1位 マルコ・カノラ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ) 2:45'37"
2位 ベンジャミン・プラデス・レヴェルテル(スペイン、チーム右京)
3位 雨澤穀明(宇都宮ブリッツェン)
4位 アントワン・トルーク(オランダ、ロットNLユンボ)
5位 トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム)
6位 ヤスペル・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) +34"
7位 ベンジャミン・ヒル(オーストラリア、アタッキ・チーム・グスト)
8位 エンリーコ・バッタリン(イタリア、チーム・ロットNL・ユンボ)
9位 ダニロ・ヴィス(スイス、BMCレーシング・チーム)
10位 畑中勇介(チーム右京)
山岳賞
2周目:トマ・ルバ(フランス、キナンサイクリングチーム)
4周目:初山翔(ブリヂストン アンカー サイクリングチーム)
6、8周目:アントワン・トルーク (オランダ、チーム・ロットNL・ユンボ)
text:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO、Kei Tsuji、Satoru Kato
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