冷雨のジャパンカップを制したのは、ベテランらしい勝負強さを見せつけたルイ・コスタ(ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)。元世界王者が復活のシーズンを締めくくるにふわさしい勝利を挙げました。
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宇都宮森林公園は本降りの雨。気温自体はそこまで低くなく、古賀志山はスタート/フィニッシュ地点に吹き付ける北風を遮ったものの、それでもタフなレインコンディションには変わりはない。降雨のため周回数は当初予定の16周から13周に減り、レースは合計133.9km/獲得標高2,405mに。ジャケットを身を包んだ選手たちが午前10時の号砲と共に古賀志林道に向けて飛び出した。
国内勢や海外プロチーム勢ではなく、1周目の登りから世界最高峰のUCIワールドチーム勢がレースを作り始めた。逃げ集団形成を狙うチームの目論みを打ち砕くように登りと下りでハイペースを刻み、集団後方の選手は次々と脱落。2周目の古賀志林道に入ると猛然とジュリアン・アラフィリップ(フランス、スーダル・クイックステップ)がアタックした。
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アラフィリップにはロット・デスティニーのパスカル・イーンクホールン(オランダ)とマキシム・ファン・ヒルス(ベルギー)、そして前日クリテ3位のアクセル・ザングル(フランス、コフィディス)が合流し、後続集団も強者ばかりの20名程度に絞られる。1回目の山岳賞が決まる3周目の登りでアラフィリップが単独逃げに持ち込んだことでレースは(ハイペースのまま)一応の落ち着きを見ることとなる。
ダヴィデ・ブラマーティ監督の檄を聞くスーダル・クイックステップは中盤まで順調に駒を進めた。アラフィリップが逃げ、21名の追走グループにはファウスト・マスナーダ(イタリア)とイラン・ファン・ウィルデル(ベルギー)、そしてジェームス・ノックス(イギリス)を乗せる。
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"狼3匹"と共に追走グループを作ったのは好調アンドレア・ピッコロ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)やギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス)、怪童ぶりを見せつけるライリー・シーハン(アメリカ、イスラエル・プレミアテック)、バウケ・モレマ(オランダ、リドル・トレック)、ルイ・コスタ(ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)など優勝候補たち。そして唯一日本勢として岡本隼(愛三工業レーシング)も気を吐いた。
一方メンバーを乗せることができなかったのはバーレーン・ヴィクトリアスで、新城幸也はヘルマン・ペルンスタイナー(オーストリア)を率いての追走を強いられた。
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中盤には遅れていたエドワード・ダンバー(アイルランド、チーム・ジェイコ・アルウラー)や、新城グループが次々と第一追走グループに合流したものの、人数増加を嫌ったアタックが掛かるなど常にレースは落ち着かない。この過酷なコンディションの中、「調子は悪くなかったけどメイン集団に追いつく意志がなかったのでこれ以上続ける意味がなかった」と言うクリス・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック)は自らレースを降りている。
レース距離は残り半分。徐々に活気付く追走グループは8周目後半にアラフィリップを飲み込み、ノックスが3度目の山岳賞を獲得。分裂とアタック、吸収を続けた先頭グループだったが、残り4周目で再びアラフィリップが一人攻撃に出るなど、常にレースを引っ張り続けたのは"ウルフパック"だった。
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しかし残り3周回。単独で逃げていたアラフィリップは、追走グループを飛び立ったファン・ヒルスに捉えられた。1周弱を逃げたファン・ヒルスだったが大きな動きには繋がらず、結局ペースダウン。ここまで影を潜めていたコスタがカウンターアタックで先頭に立ち、そのまま最後の山岳賞を獲得。
後続からは前U23欧州王者フェリックス・エンゲルハルト(ドイツ、チーム・ジェイコ・アルウラー)がマルタンと共に飛び出し、ほぼ1周回を要してコスタを捕まえる。こうしてコスタ、マルタン、そしてエンゲルハルトの3人が、6名の後続グループに1分06秒差で最終周回突入の鐘を聞いた。
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クラシックレースの名手コスタと、クライマーのマルタン、そして若く未知数のエンゲルハルト。マルタンにとっては最後の古賀志林道が勝負所かと思われたものの「疲れていたし頂上通過後も長いので決まらないと思った」と動かない。3人はこう着状態のままダウンヒルを終え、周回後半の平坦区間をローテーション。単独追走するファン・ヒルスは届かず、最後のアップダウンでもアタックなし。決着は3人のゴール勝負に委ねられた。
経験豊富な2人がエンゲルハルトを前に出し、フィニッシュから300m以上を残して3番手マルタンがロングスプリント。しかしフィニッシュ手前の緩やかなコーナーで前を塞がれ、それをチャンスと見たコスタが3番手からタイミングを待ち、最終ストレート突入と共に加速する。抜群の伸びを見せつけたベテランが、2人を悠々と抑えて先着。大きなガッツポーズで第30回ジャパンカップ覇者に輝いた。
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終盤まで自ら動くことなく脚を貯め、ライバルの様子を伺い、ベテランらしい勝負強さとスプリント力でシーズン最終戦を制した元世界王者。UAEチームエミレーツから移籍した今シーズンはブエルタ・ア・エスパーニャのステージ優勝を含む5勝目。元世界王者復活をアピールするシーズンの締めくくりに相応しい結果を導き出した。
「テンポの速い厳しいレースだった。加えて雨と寒さが更に厳しいものにした。レース先頭の入れ替わりが激しく、その中で脚をどれだけ残すことができるのかが鍵を握った。強いチームで臨んでいたので良い結果を残そうと思っていた。優勝できて本当に嬉しい」と、レース後のインタビューでコスタは喜ぶ。チームも5位にゲオルク・ツィンマーマン(ドイツ)を、8位にロレンツォ・ロータ(イタリア)を送り込む大活躍だ。
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パンチャーとして実力を伸ばすエンゲルハルトが2位に入り、「脚がなく最後のアタックができなかった」と悔やむマルタンは3位。一人追走したファン・ヒルスが4位。日本人選手最高位はサバイバルレースを耐えた岡本の15位。順位争いのスプリント勝負でペルンスタイナーを退けUCIポイント10を獲得している。
強豪勢が次々と動いた雨のサバイバルレースを完走したのは48人。3時間28分22秒、平均スピード38.557km/hの第30回ジャパンカップが幕を閉じた。
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ジャパンカップサイクルロードレース 結果
1位 | ルイ・コスタ(ポルトガル、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) | 3時間28分22秒 |
2位 | フェリックス・エンゲルハルト(ドイツ、チーム・ジェイコ・アルウラー) | |
3位 | ギヨーム・マルタン(フランス、コフィディス) | +2秒 |
4位 | マキシム・ファン・ヒルス(ベルギー、ロット・デスティニー) | +27秒 |
5位 | ゲオルク・ツィンマーマン(ドイツ、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) | +1分34秒 |
6位 | ライリー・シーハン(アメリカ、イスラエル・プレミアテック) | +1分35秒 |
7位 | アクセル・ザングル(フランス、コフィディス) | |
8位 | ロレンツォ・ロータ(イタリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ) | +1分36秒 |
9位 | ミケール・ヴァルグレン・フンデール(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト) | |
10位 | ジュリアン・ベルナール(フランス、 リドル・トレック) | +1分39秒 |
photo:Makoto AYANO, Kei Tsuji, Satoru Kato, Yuichiro Hosoda
text:So Isobe