オンラインで熱戦を繰り広げるヴァーチャルレース「2021デジタルジャパンカップサイクルロードレースうつのみや」が10月16日(土)に開催された。UCIワールドチームをはじめ国内外のトッププロ選手や絶大な人気を誇るレジェンドたちが参戦し、新城&増田のトークショーも開催。宇都宮市と世界各国を繋ぐ模様がライブ配信された。
新型コロナウイルスの感染拡大により昨年に続いての中止が決定されたジャパンカップサイクルロードレース。今年こそはトップ選手たちの熱い走りを日本で観られることを期待していたファンも多かったが、残念ながらその期待はまたも翌年に持ち越しとなった。
それでも昨年に初開催されたオンラインレース「デジタルジャパンカップ」は2度目の開催が決定。UCIワールドチーム2チーム、同プロチーム1チーム、同コンチネンタルチーム7チーム、国内クラブチーム4チーム、大学3チームの17チーム40人、そしてダミアーノ・クネゴとマヌエーレ・モーリ(ともにイタリア)、ロビー・マキュアン(オーストラリア)という3人のスペシャルライダーズを加えた計43人がオンライン上のスタートラインに整列した。
今回も採用されたアプリは「ROUVY(ルービー)」。実際のジャパンカップコースを撮影したコースが画面に映し出され、選手たちはチームジャージのデザインが再現された「アバター」となってコース上を走る。出力データやタイムなどが画面に掲示され、どれだけパワーを使って走っているかも視認しやすい。
一般参加のオープンレース
プロレースに先立って行われたオープンレース。世界中からオンラインエントリーした参加者がレースに出場する中、宇都宮市の会場からはブリッツェンの下部育成チーム、ブラウブリッツェンの中高生3選手が出場。10.3kmのコースを3周する30.9kmで争われたレースは、最終周の古賀志林道で抜け出したHIUMA GOJIが独走勝利。2位にM.Jones、3位にC.Odekerkenが入った。
増田成幸×新城幸也のトークショー
オープンレースの興奮が冷めやらぬ中で行われたトークショーには、今夏に開催された東京五輪に日本代表として出場した増田成幸(宇都宮ブリッツェン)と新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)がゲスト出演。東京スタジオと中継を繋ぎ、MCのサッシャ氏、スタジオゲストの栗村修、辻啓の両氏と軽妙なトークが繰り広げられた。
最初に登場した増田は、東京五輪後のコンディションについて聞かれると「五輪後はモチベーション維持が大変だった。鈴木真理さんからも「五輪が終わったら厳しいよ」って言われていました。翌週に全日本選手権ロードもあるので、なんとか状態を保って走りたいです」とコメント。その五輪に関しても「新型コロナの影響がある難しい状況の中で開催されたことがありがたかったです」とあらためて感謝の言葉を口にした。今日のレースの目標について聞かれると「10位以内」と控えめに宣言。東京のスタジオからの突っ込みに「1位が新城選手で、僕が2位で(笑)」と目標を修正していた。
続いて登場した新城は、既にオフに入っていることもあって「目標は…完走です!」と、こちらも控えめ。強力メンバーでの出場には「今日はモホリッチだけでいいと思います。カルーゾは全然走ってないので。モホリッチはパリ〜ルーベでも走っていたので、強いと思います」と、チームメートの実力を信頼している様子をうかがわせた。
自国開催の五輪に関しては「みんなが喜んでくれたのが本当にうれしかった。そこに目がけてトレーニングしてきて、自分で思った結果ではなかったけど、それでも最高の結果は残せました。4年間本当に待ち続けてきたレースなので、気持ちが違いましたね」とのコメント。最後に「今年はこういう状況でしたけど、日本からも応援の声がたくさん届いたし、僕自身も最高の1年だった。チームも最高のシーズンだったので良かった。実際はもうオフなのですけど、最後にこのデジタルジャパンカップを走って締めくくりたいと思います」と締めくくった。
プロレースはモホリッチがツール・ド・フランスさながらの圧倒的な独走勝利
18時からのプロレースは、トラック競技でも活躍する沢田桂太郎(スパークルおおいたレーシングチーム)がスタートから猛ダッシュ。この動きに地元宇都宮市出身の床井亮太(シマノレーシングチーム)、高木三千成(さいたまディレーブ)、そしてレジェンドのロビー・マキュアンが追随。さらに古賀志林道に入ると新城やマイケル・マシューズとジャック・バウアー(ともにチーム・バイクエクスチェンジ)、谷順成、新開隆人、島野翔汰の那須ブラーゼン勢、吉岡直哉(チーム右京相模原)らが先頭を争い合う展開になり、吉岡が先頭でKOMを通過。
下り区間を経て県道に出ると織田聖(NIPPO-プロヴァンス-PTSコンチ)も先頭に顔を見せる中、新城が猛烈なペースで先頭に躍り出てリードを奪う。田野町交差点を曲がるとバウアーやマテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)などのワールドチーム勢にマキュアン、日本人選手勢追いつき、入り乱れるようにして2周目に入る。
2周目古賀志林道に入ると、ツールでステージ2勝を挙げるなど充実のシーズンを過ごすモホリッチがペースアップ。この動きに谷、続いて吉岡が反応して追いかけるが、モホリッチは寄せ付けずに独走態勢に入る。先頭を独走するモホリッチに対し、後方では谷、吉岡、バウアーが追走集団を形成。さらにその後方に織田、マキュアン、新城、高木、新開らが続く展開になった。
快調に先頭を独走するモホリッチに対し、後方ではマキュアンが追走集団に合流、岡篤志(NIPPO-プロヴァンス-PTSコンチ)や堀孝明(宇都宮ブリッツェン)が後方からジャンプアップしてくるなど出入りに激しい展開になって、レースは最終周に。最終周に入っても一向にペースが落ちないモホリッチ。一方の追走集団は織田が合流して5人になり古賀志林道へ。ここで吉岡がペースアップをすると谷が反応し、2人が若干先行してモホリッチを追いかける状況になった。だが、その後も安定して高出力を維持したモホリッチは、レースの半分以上を独走する圧巻の走りで優勝。注目の2位争いはゴール手前で仕掛けた吉岡が先着、谷が3位になった。
優勝したモホリッチは「バーチャルレースはずっとプッシュしなければいけないから、本当のレースよりずっとハードだった。今度は日本でレースをしたいと思っている。パンデミックが終わったらぜひ行ってみたいね」とコメント。
地元の那須ブラーゼンに所属したこともある2位の吉岡は「昨年まで栃木に住んでいて思い入れもあったので、今回のレースでいい走りができて良かったです」と安堵の表情を見せた。地元栃木県勢として最高位となった3位の谷は「最後はついていくのが精一杯でそのままゴールに入りました。でもいい成績を残せてよかったです。今年はコロナ禍の難しい状況の中でレースを開催していただけて、いい経験ができたので本当に感謝しています」と感謝の言葉を口にした。
地元宇都宮のチームとして好成績を残したかった宇都宮ブリッツェンは、堀の10位が最高位。その堀は「全開で走りましたが、レース前にオープンレースの解説で1時間立ちっぱなしだったことも響いて厳しかったですね。宇都宮市出身で宇都宮のチームに所属する選手として、実際のジャパンカップと同様に勝ちたいと思って走っていたので残念です。来年はリアルのレースが有観客で開催され、古賀志林道で観客を沸かせるような走りができるように引き続き頑張ります」と決意を語った。
残念ながら2年連続でのオンラインレースとなったが、トップ選手たちのハイレベルな走りで昨年以上に白熱するレースとなったデジタルジャパンカップ。来年はジャパンカップサイクルロードレースが無事に開催されることを祈るばかりだが、今後もこのようなオンラインレース開催の可能性を感じさせるには十分だった。
2021デジタルジャパンカップうつのみや 結果
1位 マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス) 46分3秒
2位 吉岡直哉(チーム右京相模原) +22秒
3位 谷順成(那須ブラーゼン) +28秒
4位 ジャック・バウアー(チーム・バイクエクスチェンジ) +46秒
5位 織田聖(NIPPO-プロヴァンス-PTSコンチ) +49秒
オープンレース 結果
1位 HIUMA GOJI 50分23秒
2位 Mark Jones +23秒
3位 Christophe Odekerken,+35秒
4位 Steven Ireland +1分8秒
5位 Kousuke Nakazawa +1分22秒
photo&text:Nobumichi Komori
新型コロナウイルスの感染拡大により昨年に続いての中止が決定されたジャパンカップサイクルロードレース。今年こそはトップ選手たちの熱い走りを日本で観られることを期待していたファンも多かったが、残念ながらその期待はまたも翌年に持ち越しとなった。
それでも昨年に初開催されたオンラインレース「デジタルジャパンカップ」は2度目の開催が決定。UCIワールドチーム2チーム、同プロチーム1チーム、同コンチネンタルチーム7チーム、国内クラブチーム4チーム、大学3チームの17チーム40人、そしてダミアーノ・クネゴとマヌエーレ・モーリ(ともにイタリア)、ロビー・マキュアン(オーストラリア)という3人のスペシャルライダーズを加えた計43人がオンライン上のスタートラインに整列した。
今回も採用されたアプリは「ROUVY(ルービー)」。実際のジャパンカップコースを撮影したコースが画面に映し出され、選手たちはチームジャージのデザインが再現された「アバター」となってコース上を走る。出力データやタイムなどが画面に掲示され、どれだけパワーを使って走っているかも視認しやすい。
一般参加のオープンレース
プロレースに先立って行われたオープンレース。世界中からオンラインエントリーした参加者がレースに出場する中、宇都宮市の会場からはブリッツェンの下部育成チーム、ブラウブリッツェンの中高生3選手が出場。10.3kmのコースを3周する30.9kmで争われたレースは、最終周の古賀志林道で抜け出したHIUMA GOJIが独走勝利。2位にM.Jones、3位にC.Odekerkenが入った。
増田成幸×新城幸也のトークショー
オープンレースの興奮が冷めやらぬ中で行われたトークショーには、今夏に開催された東京五輪に日本代表として出場した増田成幸(宇都宮ブリッツェン)と新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)がゲスト出演。東京スタジオと中継を繋ぎ、MCのサッシャ氏、スタジオゲストの栗村修、辻啓の両氏と軽妙なトークが繰り広げられた。
最初に登場した増田は、東京五輪後のコンディションについて聞かれると「五輪後はモチベーション維持が大変だった。鈴木真理さんからも「五輪が終わったら厳しいよ」って言われていました。翌週に全日本選手権ロードもあるので、なんとか状態を保って走りたいです」とコメント。その五輪に関しても「新型コロナの影響がある難しい状況の中で開催されたことがありがたかったです」とあらためて感謝の言葉を口にした。今日のレースの目標について聞かれると「10位以内」と控えめに宣言。東京のスタジオからの突っ込みに「1位が新城選手で、僕が2位で(笑)」と目標を修正していた。
続いて登場した新城は、既にオフに入っていることもあって「目標は…完走です!」と、こちらも控えめ。強力メンバーでの出場には「今日はモホリッチだけでいいと思います。カルーゾは全然走ってないので。モホリッチはパリ〜ルーベでも走っていたので、強いと思います」と、チームメートの実力を信頼している様子をうかがわせた。
自国開催の五輪に関しては「みんなが喜んでくれたのが本当にうれしかった。そこに目がけてトレーニングしてきて、自分で思った結果ではなかったけど、それでも最高の結果は残せました。4年間本当に待ち続けてきたレースなので、気持ちが違いましたね」とのコメント。最後に「今年はこういう状況でしたけど、日本からも応援の声がたくさん届いたし、僕自身も最高の1年だった。チームも最高のシーズンだったので良かった。実際はもうオフなのですけど、最後にこのデジタルジャパンカップを走って締めくくりたいと思います」と締めくくった。
プロレースはモホリッチがツール・ド・フランスさながらの圧倒的な独走勝利
18時からのプロレースは、トラック競技でも活躍する沢田桂太郎(スパークルおおいたレーシングチーム)がスタートから猛ダッシュ。この動きに地元宇都宮市出身の床井亮太(シマノレーシングチーム)、高木三千成(さいたまディレーブ)、そしてレジェンドのロビー・マキュアンが追随。さらに古賀志林道に入ると新城やマイケル・マシューズとジャック・バウアー(ともにチーム・バイクエクスチェンジ)、谷順成、新開隆人、島野翔汰の那須ブラーゼン勢、吉岡直哉(チーム右京相模原)らが先頭を争い合う展開になり、吉岡が先頭でKOMを通過。
下り区間を経て県道に出ると織田聖(NIPPO-プロヴァンス-PTSコンチ)も先頭に顔を見せる中、新城が猛烈なペースで先頭に躍り出てリードを奪う。田野町交差点を曲がるとバウアーやマテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス)などのワールドチーム勢にマキュアン、日本人選手勢追いつき、入り乱れるようにして2周目に入る。
2周目古賀志林道に入ると、ツールでステージ2勝を挙げるなど充実のシーズンを過ごすモホリッチがペースアップ。この動きに谷、続いて吉岡が反応して追いかけるが、モホリッチは寄せ付けずに独走態勢に入る。先頭を独走するモホリッチに対し、後方では谷、吉岡、バウアーが追走集団を形成。さらにその後方に織田、マキュアン、新城、高木、新開らが続く展開になった。
快調に先頭を独走するモホリッチに対し、後方ではマキュアンが追走集団に合流、岡篤志(NIPPO-プロヴァンス-PTSコンチ)や堀孝明(宇都宮ブリッツェン)が後方からジャンプアップしてくるなど出入りに激しい展開になって、レースは最終周に。最終周に入っても一向にペースが落ちないモホリッチ。一方の追走集団は織田が合流して5人になり古賀志林道へ。ここで吉岡がペースアップをすると谷が反応し、2人が若干先行してモホリッチを追いかける状況になった。だが、その後も安定して高出力を維持したモホリッチは、レースの半分以上を独走する圧巻の走りで優勝。注目の2位争いはゴール手前で仕掛けた吉岡が先着、谷が3位になった。
優勝したモホリッチは「バーチャルレースはずっとプッシュしなければいけないから、本当のレースよりずっとハードだった。今度は日本でレースをしたいと思っている。パンデミックが終わったらぜひ行ってみたいね」とコメント。
地元の那須ブラーゼンに所属したこともある2位の吉岡は「昨年まで栃木に住んでいて思い入れもあったので、今回のレースでいい走りができて良かったです」と安堵の表情を見せた。地元栃木県勢として最高位となった3位の谷は「最後はついていくのが精一杯でそのままゴールに入りました。でもいい成績を残せてよかったです。今年はコロナ禍の難しい状況の中でレースを開催していただけて、いい経験ができたので本当に感謝しています」と感謝の言葉を口にした。
地元宇都宮のチームとして好成績を残したかった宇都宮ブリッツェンは、堀の10位が最高位。その堀は「全開で走りましたが、レース前にオープンレースの解説で1時間立ちっぱなしだったことも響いて厳しかったですね。宇都宮市出身で宇都宮のチームに所属する選手として、実際のジャパンカップと同様に勝ちたいと思って走っていたので残念です。来年はリアルのレースが有観客で開催され、古賀志林道で観客を沸かせるような走りができるように引き続き頑張ります」と決意を語った。
残念ながら2年連続でのオンラインレースとなったが、トップ選手たちのハイレベルな走りで昨年以上に白熱するレースとなったデジタルジャパンカップ。来年はジャパンカップサイクルロードレースが無事に開催されることを祈るばかりだが、今後もこのようなオンラインレース開催の可能性を感じさせるには十分だった。
2021デジタルジャパンカップうつのみや 結果
1位 マテイ・モホリッチ(バーレーン・ヴィクトリアス) 46分3秒
2位 吉岡直哉(チーム右京相模原) +22秒
3位 谷順成(那須ブラーゼン) +28秒
4位 ジャック・バウアー(チーム・バイクエクスチェンジ) +46秒
5位 織田聖(NIPPO-プロヴァンス-PTSコンチ) +49秒
オープンレース 結果
1位 HIUMA GOJI 50分23秒
2位 Mark Jones +23秒
3位 Christophe Odekerken,+35秒
4位 Steven Ireland +1分8秒
5位 Kousuke Nakazawa +1分22秒
photo&text:Nobumichi Komori