宇都宮ジャパンカップのチームプレゼンテーション後半では海外チームが登場。UCIワールドチームに所属する新城幸也、留目夕陽に、元世界王者マッズ・ピーダスン、トップクライマーのサイモン・フィリップ・イェーツ、マテイ・モホリッチら世界屈指のトップ選手が揃いました。
リュブリャナ・グスト・サンティック
海外チーム最初の登場は、宇都宮ジャパンカップではすっかりお馴染みとなったリュブリャナ・グスト・サンティック。トーマス・ポリャネック監督によれば、タデイ・ポガチャルを輩出した若手育成チームが携える今年の目標は「逃げに乗ってレースを沸かすこと」。ディラン・ホプキンスは「僕を含めたチーム全員が日本のレースの雰囲気が大好きでワクワクしているよ。皆でベストを尽くして良いレースを見せたい」、一昨年クリテリウムでスプリント賞を獲得したクロアチア王者のヴィクトル・ポトチュキは「今年も中間スプリントを含めて良い走りをしたい」と意欲を見せた。
チーム ノボ ノルディスク
白地に富士山と日の丸をイメージした、ジャパンカップ特別ジャージを纏って登場したのはノボ ノルディスクのメンバーたち。選手全員が一型糖尿病患者で構成され「糖尿病と共に生きる人々を勇気づけ、治療に積極的に取り組み、それぞれの人生の目標に向けて生きていくことを応援する」という、強いメッセージを胸に持つチームは、これが宇都宮ジャパンカップ9年連続出場だ。
自分自身4度目のジャパンカップ出場となるサム・ブランド(イギリス)は「昨年はクリテリウムとメインレースどちらも良い走りができたので、今年も僕らチームとして何ができるかを示したい」とコメント。実に8回目の出場となるキャプテンのダヴィ・ロサーノ・リバ(スペイン)による経験豊富な舵取りも期待したいところだ。
ロット・デスティニー
今年勝ち星を並べるロット・デスティニーは、下部育成チームからの研修組を含む、最年長が26歳、平均22.2歳という若手中心のメンバーでジャパンカップに挑む。若手中心といっても分厚い選手層を誇るベルギーのチームだけあって実力は間違いなし。若さ溢れるアグレッシブなレース展開に期待したいところだ。
マルク・ワウテルス監督によれば、日曜日に可能性のあるクライマーはヨハンネス・アダミーツ(ドイツ)。アダミーツも「実際僕らは若手中心のアンダードッグ(噛ませ犬)かもしれないし、他のチームはすごく強いメンバーを揃えている。でも逆に言えばマークは厳しくないだろうし、積極的に前に出て挑戦すればチャンスは見出せるはず」と意欲を見せている。
イスラエル・プレミアテック
イスラエル・プレミアテックもジャパンカップ連続出場中。2019年大会2位に入ったカナダチャンピオンのマイケル・ウッズを筆頭に、ヤコブ・フルサン(デンマーク)や2022年フレーシュ・ワロンヌ覇者でジャパンカップ初出場のディラン・トゥーンス(ベルギー)といった、登り系ワンデーレースに強い一軍メンバーをずらりと揃えてきた。
一騎打ちのスプリントで敗れ2位に甘んじた雪辱を晴らしたいウッズは「ステージ優勝を挙げたブエルタ以降のシーズンでもコンディションはとても良く、大好きで大切なジャパンカップを大きな目標に据えてきた。良い走りを披露できたら嬉しいね。」と気合の入ったコメント。「2019年は実際ガッカリしたので表彰台の一番上を狙いたい。レースは厳しく強い選手がたくさん来ているので難しい目標だとは思うけどトライする」と加えている。
スーダル・クイックステップ
ザ・ウルフパック。ベルギーが誇る常勝チームは今年のアルデンヌクラシックで2度トップ10入りしたマウリ・ファンセヴェナントやレムコ・エヴェネプールの相棒であるイラン・ファン・ウィルデルといった登坂レースに強いベルギー勢を揃えてジャパンカップに凱旋。イヴ・ランパールトやピーテル・セリー(共にベルギー)、ファウスト・マスナーダ(イタリア)といった力のあるいぶし銀の職人選手がダブルエースの脇を固める。
元ベルギー王者でキャプテン格のランパールトは「日曜日はマウリとイランで勝負することになると思う。シーズン最終戦として良い形で走り切りたい」とコメントしている。
リドル・トレック
2013年の初出場以来、今回で記念すべき10回目の出場となるのがリドル・トレック。なんといってもクリテリウムでは2015年と2016年に別府史之さんが2連覇し、さらに2018年にジョン・デゲンコルプを優勝に導くとともに2019年からエドワード・トゥーンスが3連覇。5連覇中のクリテリウムに向けて、元世界王者であるマッズ・ピーダスン(デンマーク)をエースに据える必勝体制を組んできた。
日曜日を見据えるのはオリンピックと世界選手権でトップ10入りしたトムス・スクインシュ(ラトビア)ら登坂力を兼ね備えるメンバーだが、監督も選手もエースを担う選手の名前は濁したまま。本気で両日優勝を狙う構えの予感大。
EFエデュケーション・イージーポスト
かつての名選手マッティ・ブレシェル監督が「勝ちに来た」と言うのが、ピンクジャージが目をひくEFエデュケーション・イージーポスト。2022年大会チャンピオンのニールソン・パウレス(アメリカ)はイル・ロンバルディア8位、その前哨戦グランピエモンテでは42km独走と、2022年ジャパンカップと重なる勝ち方を挙げており今回も2勝目に期待が掛かる。
「2年前に素晴らしい経験をした宇都宮に戻ってこれて嬉しいよ。シーズン最終戦だけど素晴らしいファンや環境にエネルギーをもらえている。2022年の時よりも強いメンバー構成で臨めているので勝利を狙っていく」とパウレスは柔らかい笑顔で話している。
並んで注目は、劇的なワールドチーム入りを果たし1年を過ごした留目夕陽だ。「去年は落車で走れませんでしたが、今年は怪我もなく万全の調子でジャパンカップを走れます。良いメンバーが揃っているので両日優勝を狙いたいと思います。来年は自分の結果を求めて走りたい」とコメントしている。
コフィディス
ジャパンカップお馴染みとなったコフィディスがエースに据えるのは、クリテリウムで2022年2位、2023年3位、ロードレースでも積極的な走りで2023年7位と好相性のアクセル・ジングレ(フランス)。登坂力とスプリント力を兼ね備え、フランドルとアルデンヌをこなすレーサーとして力を伸ばすジングレにとって、古賀志林道の距離と勾配は十分に射程範囲内。2017年のマルコ・カノラ以来となる2日連続優勝も現実味がありそうだ。
若手中心のメンバーをまとめるのは逃げの名手として知られるアントニー・ペレス(フランス)。2020年のツール・ド・フランス序盤で激しいマイヨアポワ争いを展開した登坂力と、リーダーシップでフランスチームを統率する。
バーレーン・ヴィクトリアス
これまで12回出場して4回トップ10入り(最高位は2015年の3位)した新城幸也を擁するバーレーン・ヴィクトリアスは、世界屈指のワンデーレーサーであるマテイ・モホリッチ(スロベニア)の2015年以来となるジャパンカップ出場を叶えた。グラベル世界選手権では7位、グランピエモンテで10位と好調で、古賀志林道では2022年のミラノ〜サンレモを制した時のような下りアタックが見られるか。「今シーズンは厳しいレースが続いたけれど、今は少し落ち着いているので身体のコンディションも良いと思う。日曜日は厳しいコースレイアウトで特にダウンヒルはスリッピーだ。できる限りリスクを排除しながら前を狙いたい」と意気込んだ。
チームプレゼンテーションの終わりに、新城はバーレーン・ヴィクトリアスで走る公式レースが今回最後であることをアナウンス。8年間所属したチームに有終の美を献上できるか?
アスタナ・カザクスタン・チーム
ツール・ド・九州からの連戦出場となるのが、アジアを代表するトップアスタナ・カザクスタン・チーム。今回はブエルタでステージトップ10に2回入ったジャンマルコ・ガロフォリ(イタリア)と3年連続のアフリカ大陸王者ヘノーク・ムルブルハン(エリトリア)を主軸に据えての参戦だ。さらにツール・ド・九州でステージ優勝と総合3位に入ったイヴァン・スミルノフ好調。特に戦略は語られなかったものの、他の海外チームと比べて時差ボケはなし。ムルブルハンが駆る美しい特別バイクにも注目だ。
チーム・ジェイコ・アルウラー
2016年、2018年、2019年、2023年に続く5回目の出場を果たしたチーム・ジェイコ・アルウラーは、昨年2位のフェリックス・エンゲルハルト(ドイツ)やプロトン屈指のクライマーであるサイモン・フィリップ・イェーツ(イギリス)を擁しての参戦。選手同様大歓声に包まれるマシュー・ヘイマン監督曰く「昨年2位だったフェリックスもサイモンもいるので日曜日のレースが楽しみだ」とのコメント。
「ツールの後は5、6レースを走っただけなので疲労感もないし、レースが楽しみだ。厳しいレース展開になるだろうけれど、そういう展開は僕の得意とするところでもある」とイェーツはコメント。今季限りでの引退を表明したローソン・クラドック(アメリカ)はファンの応援に感謝するコメントを残して温かい拍手に包まれていた。
出場選手が一堂に会したプレゼンテーションを終え、明日土曜日は山岳コースでのオープンレースと宇都宮市街地でのクリテリウムが開催される。
text:So Isobe
photo:Makoto AYANO, Kei Tsuji